会議・研修

安心の地域づくりへ 協同組合精神の発揮を

第26回厚生連病院と単協をつなぐ医療・福祉研究会を開催

11月17日、第26回厚生連病院と単協をつなぐ医療・福祉研究会(福祉研)を「JA大会決議『安心の地域づくり』実践にむけて」をテーマにオンライン開催し、9県16施設より23名にご参加いただきました。

研究会は第1部と第2部に分けて開催されました。第1部では「充実した社会保障実現と住民による豊かな社会参加を目指して~助け合いによる地域づくりの考察~」をテーマに、学習講演とパネルディスカッションを行いました。

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学習講演(1) 高齢者に寄り添うケアのあり方とは

学習講演では、東京家政大学人文学部教授の松岡洋子氏が「基盤としての公的制度と住民による豊かな社会参加」と題し、講演されました。
高齢者ケアにおいて、要介護者ができないことに対し、専門職によるサービスの提供を原則とする「古い福祉国家型社会」から、要介護者が望んでいることに対して、ボランティアなどの地域資源を活用してWell-being(幸福)を実現するという「自立・参加型社会」へのパラダイムシフトが世界の潮流であるとお話しいただきました。具体例としてヨーロッパ各国の取り組みを挙げ、高齢者を介護の対象としてではなく生活の主体としてとらえてボランティアが対話し、一人ひとり異なる願いをかなえるよう行動することで、介護保険の利用削減や、地域コミュニティを主体とした社会への変化が起きていると話されました。また日本での例として豊明市総合事業を挙げ、高齢者が介護サービスを使い続けるのではなく、これまで通りの暮らしに戻るという「ふつうにくらすしあわせ」を目指した、住民ボランティアを主体とした支援の取り組みが紹介されました。

パネルディスカッション 協同組合の精神を広げよう

パネルディスカッション「介護保険・福祉制度の拡充と豊かな社会参加の実現」では、コーディネーターを元日本福祉大学教授の石川満氏、パネラーを松岡氏、金城学院大学人間科学部教授の朝倉美江氏、文化連代表理事理事長の東公敏が務めました。

石川氏は報告で、今後の医療・介護の見通しとして、外来患者数は減少局面を迎えているが、入院や在宅患者数は2040年にかけて増加が見込まれていること、それに伴い地域で必要となる介護サービスも増加すると話されました。また、財務省財政制度審議会で介護保険給付の削減が議論されているが、一人ひとりが安心して暮らし続けられるような地域の在り方の検討が求められると話されました。

朝倉氏は、この間、高齢者の医療費負担や介護利用料が増え続けており、2024年介護報酬改定に向けてさらなる負担増が国から提言されるなど、社会保障制度を縮小し自助を基本とした社会への転換を進められようとしているが、これでは高齢者の幸せは実現できないと指摘されました。そこで協同組合による介護サービス・活動と地域づくりを進め、高齢者との対話を基礎に専門職や住民支援者などが話し合うことで、共同の福祉を実践して、イニシアティブを発揮し、公助を引き出していく増進型地域福祉社会の実現が求められると述べられました。

東文化連理事長が文化連報告として、長野県上田市の農協の旧支店を活用した「豊里ふれあいの里」内のふれあいサロン・カフェ「ひなたぼっこ」の事例を紹介しました。地元ボランティアによるカフェ運営や、住民による自主サロンの開催、こども食堂や窯焼きピザイベントの取り組みを通じて、認知症になっても住民と支えあって暮らしていける「安心の地域づくり」を進めている様子を紹介されました。

ディスカッションでは、豊明市の事例については自治体がイニシアティブを取ったことが成功につながったことや、介護における日本のボランティアの課題としてヨーロッパのような組織化や専門職との協力を深めることが必要であること、また文化連に対する要望として、助け合いの土壌を日本に広めるよう上田の事例のようなモデルを広く示して協同組合の精神をいっそう広げてほしいとの意見がだされました。

学習講演(2) 小規模多機能経営のポイント学ぶ

第2部ではインフィック株式会社取締役副社長の大場勝仁氏が「介護の未来を担う小規模機能を成功させるには」と題して、介護施設を経営している経験をもとに、実際に小規模多機能型居宅介護を経営する際の注意点について話されました。小規模多機能とは自宅を中心に事業所で様々な介護サービスを提供できることが特長であり近年着実に増加していると紹介されました。そして今後の事業の強化ポイント、収支への影響について説明し、人件費をかけて利用者自宅への訪問を強化することで、家族や本人の変化に気づくことができ、小規模多機能らしい、その場その場に応じた必要な介護サービスを提供することが可能となり、経営改善にもつながると説明されました。

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