JA全国大会に向け、厚生連医療・農協福祉の課題を組織協議
第30回JA全国大会に向けた組織協議を行いました。
文化連では、第30回JA全国大会に向けた組織協議を行い、「厚生連医療・農協福祉にかかる課題認識について」(経営管理委員会決定)としてまとめ、JA全中に提出しました。また、本会通常総会特別アピールに主な内容を反映しました。本稿で7項目の「課題認識」(下記)の概要を紹介します。10月の全国大会における「大会決議」を契機として、会員の皆さんとともにさらなる運動と事業の強化を図ってまいります。
▷ 第76回通常総会特別アピールはこちら
1.医療と食料の重要性はコロナ禍の教訓
今大会は未曽有のパンデミック後の最初の開催となります。コロナ禍を経た社会的な教訓や課題を広く農協グループで共有し、「大会決議」において国民や社会に向けて発信する機会としていくべきだと考えます。
これまで厚生連病院は率先してコロナ患者の受け入れや治療に奮闘してきました。健診施設や農協福祉施設はコロナ禍の中で事業を継続し、社会的役割を果たしました。身近な地域に病院・介護施設・保健所が存在することの大切さや、医療・福祉をはじめとするエッセンシャルワーカーが社会に必要不可欠であることが明らかとなりました。
食料の国内生産の重要性もコロナ禍で改めて明確になりました。食料安全保障のために、自給率の向上、適正な農産物価格形成や直接支払い政策の充実が求められています。厚生連医療・農協福祉の現場においても、「国消国産」をはじめとして農業を守る取り組みを重視していきましょう。
2.地域社会の存続条件としての医療福祉と教育
「大会決議」では、少子化・人口減少の解消と地域社会の存続対策の強化が方針化されますが、そのための必要条件として、地域の「医療・福祉」および「学校・教育」を守ることを強く打ち出すべきではないでしょうか。
厚生連医療が地域に存在することの価値と、公的医療への財政支援、医師・看護師等の確保の重要性について、さらに呼びかけを強める機会としましょう。また、厚生連病院がない地域や農協として福祉事業を実施していない地域でも、地域のインフラである医療機関や介護施設(公立や他法人)の支援に、農協として貢献する取り組みが大切になってきます。
地域の「学校・教育」もインフラとして最も重要です。小中学校を存続・維持する運動や、大学・高校との連携協定活動等に多くの農協が取り組んでいます。厚生連医療・農協福祉として、医療・福祉系の大学等との連携や実習生の受け入れ、中学生・高校生の医療・福祉体験学習の取り組みを重視していきましょう。
3.防災・気候変動対策の強化、国際平和の希求
震災や豪雨、火山噴火等が頻発しています。「大会決議」では、地域社会のために防災・減災に備える役割を農協グループとして表明する機会としてはどうでしょう。被災地の生活・農業の復興を支援することや行政との間で防災計画を共有すること、厚生連の災害拠点病院やDMATの強化、農協福祉施設のBCPのさらなる整備が課題となります。
また、気候変動対策は次世代の子どもたちや社会に対する私たちの責任であり、「大会決議」で特別に重視して取り上げるべきです。厚生連医療・農協福祉においては、施設や設備のエネルギー対策、資材の環境対策等が求められます。
世界的に平和を脅かす動きが続く中、国際平和の希求は多くの組合員の願いです。命とくらしを守る厚生連医療・農協福祉として、「協同組合を通じた積極的平和に関する宣言」(2019年10月 国際協同組合同盟総会)をあらためて確認し共有していきましょう。
4.認知症基本法の理念を踏まえた取り組み
「認知症基本法」が施行されました。これまでの社会の予防偏重・自己責任の考え方を反省し転換を図るものです。認知症の人が尊厳と希望を持って暮らせる共生社会をめざして、国・都道府県・市町村の責任や企業の努力義務が基本法に明記されました。厚生連医療・農協福祉として、最新の医学的知見に基づき専門性を発揮して、認知症患者と家族の方々を支える取り組みを今まで以上に強めていかなければなりません。
「大会決議」では、予防の活動にとどまるのではなく、「居場所と役割があり仲間と支え合えれば、認知症になっても大丈夫!」の共生社会づくりを打ち出すべきではないでしょうか。農協のすべての事業所が見守り・相談拠点となり、患者と家族の方々の「困りごと、使いづらさの改善(=合理的配慮)」を進めましょう。「認知症基本法」の理念に基づく社会的責任を、農協グループを挙げて率先して果たす表明と実践が求められています。
5.厚生連医療の地域連携、農協福祉の医療連携
「大会決議」では、「行政・団体と連携した地域活性化」が強調されます。この方針の一環として、医療福祉における「地域連携」について取り上げてはいかがでしょうか。
医療から介護にかかる一連の切れ目のないネットワークを、個別の法人・グループではなく地域完結型で作るのが「地域包括ケア」「地域医療構想」です。厚生連病院は、地域の医療機関の中で「機能分化・連携」を進めることが必須です。早期退院や在宅医療の進展、中重度要介護者の増加の中で、農協福祉においても、さまざまな医療機関・施設・事業者との「地域連携」「医療連携」が急がれます。
助け合い活動では、従来の農協組織内の活動に加えて、地域のさまざまな住民活動との連携(組合員への紹介や農協施設利用の協力等)に視野を広げて取り組みましょう。
6.事業と一体となった協同・組合員参加
「大会決議」では「活動と事業の好循環」が提起されます。「協同・組合員参加」について本質的に深め合う大切な機会となります。
協同組合においては、事業そのものが組合員の利用結集による協同活動です。活動と事業が別個に存在して関連・循環するイメージより、事業と協同活動の一体性が本質と言えるのではないでしょうか。健診事業では、個人と専門職の間のみならず、協同活動の中で組合員同士が励まし合って受診率向上や生活習慣の行動変容を進める健康づくり活動。営農事業では、部会の共販活動。生活購買・直売所事業では、食農教育活動があります。こうしたことがその一体性の典型といえます。
そのための「声を聴く活動」(対話)は、厚生連医療・農協福祉でとりわけ強化していく必要があります。病院・施設として責任をもって集約・分析し組合員にていねいにフィードバックしていきましょう。「関係性が強固な層」(アクティブメンバーシップ)を重視するだけでは不十分です。すべての組合員に「対話」「参加」の機会が開かれ、だれもがどんなことでも「声」を上げ協同組合の事業をより良くしていくことに役立ったと感じられること、このことを協同組合における運営参画・意思反映の基本に据えていきましょう。
7.「協同組合アイデンティティ」とつながった人材育成・確保
2025年は国際協同組合年が予定されています。「大会決議」で「人材育成・確保」が強調されますが、協同組合の理念や原則、アイデンティティを再確認し合う大運動を広げることとつなげた人材対策としていきたいものです。
日本協同組合連携機構(JCA)は、新たな協同組合原則として「協同組合を共に担うものとしての職員」を加えることを提言しています。厚生連医療・農協福祉において、専門職を含めて人材の確保・育成・教育研修において、こうした考え方を明確に位置付けていくべきでしょう。